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大阪高等裁判所 昭和31年(ラ)242号 決定 1964年1月29日

抗告人 大和精機工業株式会社 外七名

主文

原決定を取消す。

本件を大阪地方裁判所に差戻す。

理由

抗告人大和精機工業株式会社は、「和議不認可の原決定を取消し、本件和議を認可す。」との決定を求め、その抗告理由の要旨は、別紙記載のとおりである。

その余の抗告人等は、昭和三一年九月一〇日なされた和議不認可の決定を取消し、右和議の認可ある旨の裁判を求め、その抗告理由の要旨は、右和議不認可決定は、昭和三一年九月一〇日言渡されたが、同抗告人等は、大和精機工業株式会社に対し、債権を有し、債権者集会で和議可決に賛意を表し、和議は正当に可決されたのに拘らず、不認可となつたが、その決定は不服であるので、利害関係を有しているから、和議法第七条により即時抗告をする。というのである。

よつて、考えるのに、和議法第四九条、破産法第三〇二条によると、和議提供者は、和議債権者を利する場合に限り、和議の条件を変更することができるものであるところ、その時期については、別段これを制限した規定がなく、元来、和議条件が一般和議債権者の利益に変更せられることは、もとより望ましいことであるから、他の規定との関係より支障を生じない限り、これを許すべきものと解するのが相当である。それで、一旦和議が債権者集会に於て可決せられた後でも、未だ裁判所がその認否の決定をしない間は、債務者は、さらに、和議債権者に有利な条件に変更しようとする申立をすることができるものであつて、裁判所はその申立につき考慮の上、適当と思料する場合には、その変更せられた和議条件につき議決するため、さらに債権者集会を開き得るものと解しなければならない。そして、原審が初めにした和議不認可決定を取消され、事件の差戻を受けた後、債務者より和議債権者一般の利益となる和議条件変更の申立があつた場合も、この理は同様と解すべきものである。そして一旦、和議法第五九条第二号所定の二ケ月内に和議が可決せられた場合に、その認否決定前、またはその決定が抗告審で取消され、事件の差戻があつた後、債務者より和議条件変更の申立があり、かつ、裁判所がその申立を許すべきものとして、さらに債権者集会を招集したときは、和議法第五九条第二号の期間は後の債権者集会の第一期日よりこれを計算すべきものと解するのが相当である。(大審院昭和一六年四月八日決定民事判例集二〇巻四四一頁参照)

本件についてみるに、一件記録によれば、経済事情の変動、不動産価格の上昇により、債務者の資産は、本件和議が可決された頃や原決定がなされた頃に比し、その所有不動産価格の大幅上昇により、相当大幅な増加を示し、債務者の財産状態にくらべて、和議による弁済条件は、一般和議債権者にとり極めて悪いものとなり、本件和議の決議が、和議法第五一条第四号にいう和議債権者の一般の利益に反するときに当ることは明らかであるが、債務者においても、債務者の著しい資産増加等の事情変更により、和議条件を一般和議債権者の利益に変更の申立をする機会を与えられたい旨申しでていることが、記録上認められる。

そうすると、本件は、原決定を取消して原審に差戻し、債務者に対し、一般和議債権者のため利益に和議条件変更の申立をする機会を与えるのが相当と考えられ(もつとも、相当期間内に、債務者が、一般和議債権者のため利益に和議条件変更の申立をしないときは、前になされた和議の決議を不認可とする外はない。)、右措置をとるのに障がいとなるような事実は、記録上認められないので、原決定を取消し、本件を大阪地方裁判所へ差戻すことにし、主文のとおり決定する。

(裁判官 岩口守夫 藤原啓一郎 岡部重信)

別紙

抗告人大和精機工業株式会社抗告理由要旨

一、原決定は、(一)債権者集会にて和議を可決した和議債権者の総意を無視し、(二)単に反対債権者の意向のみを偏視し、(三)抗告人の誠意ある努力による更生の意図を無視する等失当である。

二、抗告人は和議申立後である昭和三一年一月一日抗告人所有の土地建物を大和機工株式会社(以下第二会社と略称する)に賃貸し、月により差があるが最低八万円、最高一五万円位の賃料の支払を受け、これをもつて徐々に債務を整理しつゝある。

三、和議申立当時の抗告人の債権者は九七名であつたが、昭和三五年二月末現在においては、

(イ) 一部債権者からは債権全額の放棄を受け

(ロ) 一部債権者は死亡し

(ハ) 一部債権者は閉店整理し、

(ニ) 一部債権者は第二会社と平和裡に取引開始し、旧債権は全然請求せざる旨の合意あり、

残余一六名の債権者のみが、和議申立当時の儘の状態であるに過ぎず、その債権は合計金一二、九一三、五七五円である。

四、原決定後今日までの著しい経済事情の変動殊に不動産価額の上昇により抗告人所有不動産の価額は最低一億円以上となるに至つた。(昭和三五年一〇月二四日当時の鑑定価格は金九二、三〇三、五四〇円)これに対し和議債権は昭和三七年二月八日現在で合計金一二、九一三、五七五円を残すのみとなり、また担保権者らの債権額も同年一月三一日現在で合計金二四、四三一、六二七円となり、両者を合計しても金三七、三四五、二〇二円に過ぎない。

五、本件抗告が棄却されると抗告人は必然的に破産者となるが、現在では抗告人の資産は不動産のみをもつてしても優に一億円を上廻るから、支払能力は充分にあり、破産原因は毛頭存しないから、是非とも原決定を取消し、本件を原審に差戻し、抗告人に和議条件変更の申出をなす機会を与えられたく切望する。

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